掲載日時 2017/02/23
植物発酵エキス(OM-X)に疲労を抑制する効果と筋持久力を向上する効果があることを発見!
株式会社バイオバンク(岡山県岡山市)は三重大学大学院生物資源学研究科(三重県津市)の伊藤智広准教授らの研究グループとの共同研究により、植物発酵エキス(OM-X)が疲労抑制と筋持久力の向上に役立つことを発見しました。
なお、本研究成果は、科学雑誌「Natural Product Communications」2017年初巻に掲載されました。
【本研究の概要】
日本で疲労感を自覚している人の割合は就労人口の約60%で、その半数が半年以上続く慢性的(6ヶ月以上)な疲労に悩んでいるといわれています(1)。その為現在、疲労回復に関する研究が数多くすすめられており、鶏胸肉のイミダゾールペプチドや魚肉のアスタキサンチンなどの天然成分が有用であるという研究報告が出されています(2, 3)。
株式会社バイオバンクは、野菜や果物、海藻、茸類などを発酵させたエキス(OM-X)を開発・製造しています。植物発酵エキス(OM-X)に関して、以前よりユーザーから「疲れを感じにくくなった」といったアンケートが多く寄せられており、OM-Xには「疲労抑制効果」があると期待されていました。
そこで株式会社バイオバンクは、OM-Xの「疲労抑制効果」を確かめることと、そのメカニズムの解明を目的として、三重大学大学院の伊藤智広准教授らと共同で研究を行いました。
マウスを強制的に泳がせる試験の結果では、OM-Xを与えたマウスは、与えていないマウスよりも、水泳の持続時間が約2倍となりました。またこの時のマウスの肝臓を調べたところ、疲労物質であるアンモニアを代謝する過程で作用する酵素の遺伝子発現量が増加していました。よって、OM-Xを与えることで疲労物質の代謝が促進され、マウスの水泳持続時間が長くなったのではないかと考えられました。これらの研究成果から、OM-Xをマウスに与えることで疲労抑制効果が発揮され、筋持久力が向上するということが示唆されました。
【研究の手順】
OM-Xは「疲労抑制効果」をもつと期待し、マウスを用いた強制水泳試験を行いました。
OM-Xを与える投与グループと与えない無投与グループの2つに分け、投与グループにはOM-Xをマウスの体重1 kgあたり85 mg、4週間連続で与えました。投与グループのマウスは、OM-X投与開始から試験終了の4週目までの各週に強制水泳試験を行いました。非投与グループのマウスも同様に強制遊泳試験を行いました。その結果、OM-X投与グループのマウスは無投与グループと比較して、水泳持続時間が約2倍になり、疲労抑制効果、筋持久力の向上が認められました(図1)。
また強制水泳試験完了後、マウスの血清成分分析を行いました。すると、OM-X投与グループのマウスでは、血清および肝臓の脂質成分濃度(コレステロール、中性脂肪、リン脂質)が減少しており、運動中に脂肪をエネルギーとして利用していることが確認できました。加えて血清中の乳酸量も減少しており、激しい運動をしている最中に乳酸をエネルギー源として再利用していると考えられました。
更に、疲労の原因となるアンモニアを解毒する作用を持つ酵素Arg1とCps1の遺伝子の発現についても調べたところ、OM-X投与グループの方が無投与グループよりも多く発現していることが確認されました(図2)。
以上の結果から、OM-Xを摂取させたマウスは疲労蓄積が抑制され、運動を持続できる時間が延長したと考えられました。この研究成果により、OM-Xは疲労の抑制や運動能力の向上に役立つ食品・素材であることが示されました。
【参考文献】
1)
厚生科学研究費補助金健康科学総合研究事業「疲労の実態調査と健康づくりのための疲労回復に関する研究」平成11年度研究業績報告書 19-44
2)
日本補完代替医療学会誌 6, 123–129 (2009)
3)
臨床医薬 18, 1085 (2002)
【伊藤智広准教授 プロフィール】
氏 名:伊藤 智広(いとう ともひろ)
所 属:三重大学大学院 生物資源学研究科 海洋生命分子化学講座
経 歴:
平成10年(1998年) 農林水産省管轄国立水産大学校 卒業
平成10年(1998年)~井村屋製菓株式会社中央研究所 研究員
平成18年(2006年)~財団法人岐阜県国際バイオ研究所健康有用物質研究部 専門研究員
平成19年(2007年)~財団法人岐阜県国際バイオ研究所健康有用物質研究部 専任研究員
平成23年(2011年)~近畿大学農学部水産学科 講師及び准教授
平成28年(2016年)~三重大学大学院生物資源学研究科 准教授 現在に至る